大阪地方裁判所 昭和37年(ワ)1594号 判決
以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。
〔事実と判断〕訴外食糧配給公団は、昭和二六年六月三〇日当時、かつて被告に対し売掛けた藷類の代金債権及びこれに対する日歩五銭の割合による遅延損害金債権を有していたが、昭和二六年七月一三日、大阪簡易裁判所において、右公団と被告との間に、「被告は右公団に対し、右藷類売却代金四七万六一〇二円一二銭及びこれに対する遅延損害金一二万五九七一円ならびに右代金元金に対する昭和二六年七月一日以降右支払いずみに至るまで年六分の割合による遅延損害の支払債務のあることを認める。被告は、右売却代金四七万六一〇二円一二銭を分割して、昭和二六年九月末に内金一〇万円、同年一二月一五日に内金一五万円、同二七年二月末に残金二二万六一〇二円一二銭を支払う。被告が右分割支払いを完全に履行したときは、公団は、被告の遅延損害金の支払義務を免除する。被告が右分割支払いを一回でも怠つたときは、期限の利益を失い代金残額および右遅延損害金を一時に支払う。」という趣旨の裁判上の和解が成立した。原告国は、その後、昭和二七年一月一〇日に食糧配給公団解散令により、右訴外公団から、その被告に対する前記債権を譲受け、昭和三七年四月二八日右和解内容となつている代金及び遅延損害金の支払いを訴求したのに対し、被告は、本件買掛金債務は売買に基づくものであり、昭和二六年六月三〇日から二年後である昭和二八年六月三〇日の経過によつて短期消滅時効によつて消滅していると抗争した事案につき、裁判所は次のとおり判示した。
「本件訴訟の目的である債権は、訴外食糧配給公団が被告に売却した藷類の代金債権及びこれに対する遅延損害金債権であるところ、売主である右公団は、生産者、卸売商人または小売商人のいずれにも当らないから、二年の短期消滅時効を定めた民法第一七三条第一項の適用はない。また、右公団と被告との売買が商行為ではないこと、被告が商人でないことは、被告がみずから進んで主張するところであつて原被告間に争いがないから、商法第五二二条の五年の短期消滅時効に関する規定も適用がないこというまでもない。(なお、付言すると、本件訴訟の目的物については、裁判上の和解が成立しているのであつて、このような場合には、和解の目的となつていた債権が本来民法または商法上の短期消滅時効の適用をうけるものであると否とを問わず、すべて民法第一七四条の二第一項により、一〇年の消滅時効に服するものであるから、被告の短期消滅時効の主張中右和解成立の日の後に発生する遅延損害金を除くその余の債権に関する部分は、失当というほかはない。もつとも、同条第二項は、権利確定当時まだ履行期の到来していない債権につき、同条第一項の適用を排除しているが、同条第二項は、判決により将来の給付請求権が確定され、または和解による互譲や調停の結果、当事者間において、履行期未到来の債権が、そのようなものとして直接確定された場合に適用されるものというべく、これと異なり、本件和解のように、和解当事者間において、すでに履行期の到来した債権すなわち即時給付請求権の存在が直接確定され、それと同時に、和解の方法として、別に履行の猶予が約された場合には、即時給付判決により一〇年の時効に服する債権が確定した後履行期が猶予された場合と同様、同条第二項の適用がないものと解すべきである。)
そうだとすると、本件の訴訟物である債権は、すべて民法の一般規定により、一〇年の消滅時効に服するわけであるから、短期消滅時効に関する被告の主張は採用できない。」